犬は大変賢く、恩を忘れない生き物です。犬の持つ癒し効果は大きく、成長するにつれて大切な家族の一員になります。
食卓を囲んでいる時にも寄ってきてヒトの食べ物に興味を示し、欲しがる時があります。ところが犬には与えてはいけない危険な食べ物があります。
犬もヒトと同じで食べ物でアレルギーを起こしたり、何気なく与えたおやつが原因で中毒症状を起こしたりもします。無知ほど罪なことはありません。
普段から愛犬の特徴、特に食べ物に対する反応などを細やかに観察し、危険な食べ物をきちんと把握しておくことが必要です。食べ物は賢く与えなければなりません。
本稿ではこの大切な家族の一員であります犬に与えてはいけない危険な食べ物について解説します。
犬に危険な食べ物とは
以下にご紹介する食べ物は犬には毒として作用します。これらの食材で調理された料理の残り物なども危険です。不用意に与えてはいけません。
ネギ属に所属する植物、野菜類
犬の玉ねぎ中毒は有名な話で、犬がニラや玉ねぎを食べるとそれらに含まれている成分のチオ硫酸化合物により赤血球が破壊され溶血性貧血を起こすことが知られています。
この中毒は1975年に北海道大学の家畜病院に血尿の症状を呈する大型犬が運び込まれ、原因が玉ねぎによる中毒症状と判明した事件があり、それ以来「玉ねぎ中毒事件」として拡散しました。
チョコレートやココアの苦味成分にテオブロミンがあります。
テオブロミンは中枢神経に働きかけ興奮状態にしたり、心筋を活性化させます。それが過敏に作用すると、主に悪心,嘔吐,下痢,激しい動悸、ふるえ、心臓発作などの中毒症状を呈することが分かっています。
犬はヒトと違ってテオブロミンの代謝速度が特に遅く、効き目が強く現れるためにこのような急性の中毒症状を引き起こす場合があります。
目安として、小型犬でおよそ50g、中型犬では400g位のチョコレートを食べると中毒症状を起こすと言われています。テオブロミンはカカオに含まれており、カカオの含有量により同じ分量でも危険度が変化します。
カカオの含有量が多いチョコレートは色が濃く、苦味も強い特徴があります。贈答用で価格も高いのが普通です。これは犬には危険度が高く与えてはいけない食べ物です。
ちなみにホワイトチョコはテオブロミンを含みません。犬にとっては無害です。
犬がぶどうやレーズンを食べると急性腎不全の症状を呈することが分かっています。
しかしぶどうのどのような成分が作用しているのかは未だ分かっていません。ぶどうの持つファイトケミカル成分の特定が急がれます。
特にレーズンはぶどう粒よりもより強い毒性を発揮するようです。ぶどうの果肉・皮・種のどの部分でも犬には与えられません。
犬にアボカドは与えてはいけません。アボカドの果肉や種、樹皮や葉などにはペルシンという成分が含まれており、犬には毒として働き中毒症状を引き起こします。
ペルシンはごく最近発見され、ヒトには無害か、もしくは今後の研究次第で乳がんの治療薬になる可能性を秘めている未だ謎の多い成分ですが、犬や小鳥などヒト以外の生物には強い毒性として作用します。
主な症状に呼吸困難、下痢、嘔吐が挙げられます。
キシリトールはガムや歯磨き粉などに使われる、砂糖と違い低カロリーで虫歯予防にもなることが特徴の天然の甘味料です。
犬は甘い物を好みますが、キシリトールは与えてはいけません。
さらに犬がテーブルの上のキシリトールガムなどを勝手に誤飲するという事態も考えられます。
これにより低血糖や中には急性肝機能不全の症状が起こるとされています。低血糖特有のぐったりする症状がすぐに現れます。
骨タイプの食べ物の危険性
犬は歯がむず痒いのか骨タイプのおやつを好む時期があります。この時この犬が普段、食べ物をほとんど咬まずに飲み込むような性格であれば注意が必要です。
骨はたとえ細かく咬み砕いても消化には支障をきたします。ましてやすぐに飲み込むタイプの犬では咬んで細かくした破片の切っ先が食道などの消化管の内壁に突き刺さるような事故が起きます。
2016年以降、そのようなペットの死亡例が増加してアメリカ食品医薬品局(FDA)が注意を喚起したことがあります。特に比較的柔らかく、噛み応えの手頃な鳥の骨などは縦に割れる性質があり危険です。
歯のむず痒さを解消するのであれば、大きな豚骨を与えると良いでしょう。与えられた犬はそれを玩具にして喜んで遊び回ります。
犬が具合が悪くなった時の対処
犬が明らかに食べ物が原因で、ぐったりしたり、嘔吐、下痢、ふるえ、歩行困難などの症状を呈した場合、第一に食中毒が疑われます。
速やかに動物病院に委ねることが先決です。安易にインターネット上の知識に頼るべきではありません。餅は餅屋です。特に痙攣や昏睡状態の時は重篤な症状です。
直前に食べた物や現在の症状、食べてからの経過時間など、詳細な情報を動物病院に提示し、病院の応急処置などの指示に従うことです。症状が軽い時には経過観察ということもありますが、その際も病院の判断に従います。
犬を飼っているご家庭では昼夜を問わず対応できる緊急時の動物病院を複数、確保しておくことも普段からの心構えとして望まれます。
あとがき
果物や野菜類、豆類など植物はすべて多かれ少なかれ、害虫や紫外線などから自衛するために特有の成分を光合成などにより自ら作り出しています。
その成分は毒にも薬にもなります。植物や野菜類の持つこうした成分はヒトには有益でも、ヒト以外の生物には毒性として作用する場合があります。特にネギ属の植物を使った料理、チャーハンやスープ類などの残り物は愛犬には与えるべきではありません。
さて、今回は犬に与えてはいけない食べ物についてご紹介しましたが、これ以外の食べ物はすべて大丈夫と言う訳ではありません。
犬にも個体差があり、受け継いでいる遺伝的形質やアレルギーなどの体質により危険な食べ物はこの他にも多数存在します。
そのため普段から愛犬の特徴をよく観察し、把握しておくことが大切です。