2025年に大阪万博が開催されることになりました。国際博覧会の大阪への誘致が成功したわけです。日本政府や関係方面の努力が報われた結果になりました。
ところで今回の大阪万博開催にはどのような意味が有るのでしょうか。
大阪開催の万博は前回1970年大会ではとりわけ大きな成功をおさめ、今回55年ぶりに再度開催地として国際的に承認されたことになります。
本稿では2025年の大阪万博開催の意味と1970年の大阪万博の成功例についてお話して参ります。
最初に万博とは一体どういうものなのか解説します。
万博とは何ですか?
万博とは「万国博覧会」のことを指し、「国際博覧会事務局(BIE)」によって承認された複数国による博覧会のことで、様々なアートや物品、各種資料や情報、科学技術などを集めて展示、即売する集いであり、半年程度の長い日程で開催されます。
その目的は産業や文化の進展、科学技術や情報の発信にあります。
国際博覧会事務局(BIE)とはフランスのパリに本部があり、1928年にパリで締結された国際博覧会条約に基づき設立され、国際博覧会の開催について責任を持つ国際組織です。
BIE とは Bureau International des Expositions の略称です。
万博の起源は?
博覧会の歴史は古く中世フランス革命の時にフランスで開催されたのが最初で、国際博覧会事務局ができる前から既に一国単位で行われており、その後次第に規模が拡大していき、周辺諸国でも博覧会が行われるようになリました。
1851年、フランスの提唱ではじめて各国の共催として国際博覧会がロンドンで開催された経緯があります。この時イギリスは万博のシンボルとして「クリスタル・パレス」という当時としては驚異的な建築物を会場として設営し、各国の参加者を驚かせました。
フランスはそれに衝撃を受けたのか、1889年のパリ大会には負けじとエッフェル塔をシンボルとして建設しています。どうやら万博には各国の国威の喧伝という狙いもあるようです。
万博開催会場になることの意味とは?
次に開催国になることにはどのような意味があるのでしょうか。
数千万という来訪者を受け入れるために移動手段や宿泊施設、バリアフリーや言語の問題などに対し整備する必要があり莫大な費用がかかります。それがいい加減なものだと国際の物笑いになり、国の信用を失墜します。
開催国としては、このようなインフラ整備への投資により発生する経済効果と共に、世界各国が最先端の技術開発の成果を持ち寄り、発信する場となるため自国のみならず世界の産業や文化の進展に大きく寄与し、開催国に対する世界各国のイメージが格段にアップする効果があります。
また大人数の来訪者が開催地で行う消費活動の結果、開催地が桁違いに活性化するメリットがあります。
問題は整備したインフラが大会終了後に開催国の経済成長のために生かされるかどうかにあります。
日本における万博の成功例
次にこれまで日本で開催された万博の主な成功例をご紹介します。
■1970年開催「大阪万博」
万博開催の時期的タイミングがその地域性と合致した大きな成功例として挙げられます。
次々と高速道路ができ、高層ビルが建ち並び、大阪中が沸いたと言われています。それまでの世界万博史上最多の6400万人もの人たちが大阪に集まりました。
なぜ大成功したのでしょうか。
- 当時の日本は高度経済成長期で資金を捻出するだけの余裕があった
- 万博のために整備された高速道路や各種設備などのインフラはその後の日本の経済成長にも大いに貢献した
- 国際的にも冷戦下の米ソを中心とする東西各国は自国の科学技術を誇示し、競い合って最先端の技術を展示した
- その6年前に開催された東京五輪が日本を国際的にアピールしており大阪万博の宣伝効果を果たした
などが成功の要因として挙げられます。
この成功により多くの日本人は世界の主要国の仲間入りを果たしたという自信と自覚を持ち、明るい未来を確信しました。
■2005年開催「愛知万博」
この万博は開催前から疑問の声が上がっていた大会でしたが、結果的には成功した例になります。
2000億円近い費用を掛けて、当初の目標を大きく上回る2200万人が訪れ、経済効果は1兆3000億円にのぼったとされています。
この5年前にドイツで開催された万博では6200億円という大赤字を出して失敗しています。愛知万博はそのドイツの失敗の後を継いだ大会でした。
訪れた人の半分がリピーターであったことが特徴で、とにかく成功させようという人々の強い熱意が感じられ、もしもこのような有志がなければどのような結果になったのでしょうか。
成功ではあっても「大成功」と言うには疑問が残る例ではないかと思います。大会終了後のインフラが十分に役立っていないからです。
愛知万博の時のインフラは主に鉄道と道路がありますが、鉄道は「リニアモーターカー」に1000億円、「名古屋瀬戸道路」に650億円の費用を掛けています。
万博後、「リニアモーターカー」の方は当初赤字続きで、地元自治体からの280億円の援助でなんとか黒字に到達したそうですが、「名古屋瀬戸道路」の方は決して採算が取れているわけではありません。
このことからインフラ整備という公共事業については開催地の地域性を考えた上で、必要性と資金量を十分に議論しなければならないと考えます。
2025年大阪万博の成功のためには?
大阪は既に70年大会当時の状況ではありません。今や大きな商業圏となり日本第二の都市としての機能を保持しています。70年当時と同じ発想で資金拠出を行うのは避けなければなりません。
そのような今日の大阪の地域性を踏まえ、何よりもそのテーマに思念を凝らすべきと考えます。時代に即応した、ブレないコンテンツで取り組むべきです。
ちなみに大阪府は25年大阪万博について「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマとし、人類の課題解決を目指しています。
インターネットの普及に伴い、情報や技術は万博でなくても各種メディアを通じていつでもどこからでも発信が可能な時代になっており、万博の開催に疑問を呈する声もありますが、なんと言っても万博開催による地域社会への経済効果と開催国の対外的な宣伝効果は大きなものがあります。
大阪府としては万博の誘致により、東京への一極集中を阻止し、「日本の大阪」を世界にアピールする絶好の機会となります。必ず成功させなければなりません。
まとめ
万博開催には莫大な費用が掛かります。
万博が日本に誘致された事自体はめでたいとしても、手放しで喜ぶこともためらわれます。
日本と今回の誘致を競っていたフランスは途中で誘致を辞退しています。
それはもちろん財政上の理由からですが、万博開催ベテラン国のフランスが辞退したということに注目すべきです。
万博開催は「諸刃の剣」の一面があり、失敗は許されません。不毛な資金の拠出が無いように議論を尽くし、各国から絶賛されるような博覧会にして欲しいものです。