缶詰はあらゆる食材をあらかじめ調理して密封することにより長期間の保存を可能にした画期的な発明品と言えます。
しかしこの缶詰にも賞味期限があります。賞味期限切れの缶詰はいつまでならば問題なく食べられるのでしょうか。
本稿では、2014年に小豆島の古い倉庫跡で発見された71年前の旧日本軍の赤飯の缶詰を開封した際の動画(1分27秒)をご紹介するとともに、賞味期限切れの缶詰について考えてみました。
はじめに動画からご紹介いたします。
発見された赤飯の缶詰
2014年、小豆島の古い倉庫跡で旧日本軍の特攻隊の保存食だったとみられる71年前の赤飯の缶詰が極めて良い保存状態で17缶発見されました。
そしてこの赤飯の缶詰を開けてみようというイベントが催されました。以下がその時の動画(1分27秒)になります。
赤飯の缶詰は30分ほど煮沸してから開けたそうです。この時、開封に立ち会った缶詰に詳しい専門家はその感想を要旨として以下のように話しています。
●開けた瞬間の印象
「赤飯のお米がつやつやと輝いていて、一緒に入っている小豆もふっくらしていてきれいな小豆色。すぐにでも食べたいくらいの炊きたての赤飯だった」
●においや香りは
「顔を近づけてみると甘酸っぱい香りがしました。腐敗しているわけじゃないんですけど、アミノ酸と糖分の化学的な変化があったのかなと。少しパイナップルに近かった」
この後、開封された赤飯は「日本食品分析センター」に送られ、その分析結果は、「細菌の検出は見られないが、味については保証できない」ということでした。
最後にこの専門家は、缶詰は製造年月日から大きく時間が経ってしまっても理論上は中身が腐ることはないが、化学反応によって風味が変化したり、味が抜けてしまったりする可能性について触れていました。
しかしこの71年前の赤飯は食べられるかどうかということになると、これだけの情報ではなんとも言えません。専門機関による安全性に焦点を当てた、より精緻な分析が必要となります。
安全性と必要性を考えるならば食べることはやめた方が無難でしょう。かといって絶対に危険であり、食べられないと断言することも根拠に乏しいような気がします。
缶詰の起源
缶詰は、軍隊が遠征や行軍の際に糧食の劣化を防ぐ必要性から考案され、進化してきた発明品という一面があります。
缶詰の中身についてもいろいろな食材が考えられるところですが、小豆を加えた赤飯は栄養豊富なことから最適な保存食と言えるかと思います。
赤飯は通常もち米で作られます。もち米は腹持ちが良く満腹感が得られます。その上小豆はビタミンB1、ビタミンB2、食物繊維、その他豊富なミネラル分を含んでいます。
こうしたことから軍隊が赤飯等を保存食として備蓄することは納得できるのではないでしょうか。
では本題に入ります。缶詰の賞味期限切れはいつまでならば大丈夫なのでしょうか。
缶詰の期限切れはいつまで
保存性の高い缶詰やレトルト品については賞味期限が記載されています。「賞味期限」は、サンドイッチ、ケーキ類、弁当類等劣化の早い食品に記載される「消費期限」とは異なります。
消費期限切れの食品は食べない方が無難とされています。
賞味期限は未開封で記載された保存方法を守った場合に「品質が変わらずにおいしく食べられる期限」のことであり、賞味期限が切れたから直ちに食べられなくなるわけではありません。
問題は賞味期限が切れたあとどのくらい日持ちがするかということです。
これには、まず缶詰の賞味期限を知っておく必要があります。一般的にメーカー側では缶詰の賞味期限は3年に設定しています。もちろん未開封で、記載された保存方法を守った場合です。
その上で、食品ロス削減対策で消費者庁が用いた安全係数の考え方をご紹介します。以下の計算式で示されます。
賞味期限切れ後の日持ち(月数)= 賞味期限(月数)× 1/10 × 1/2
この式によると賞味期限が3年(36ヶ月)の缶詰は賞味期限が切れた後、1.8ヶ月間が食べきる目安となります。
次に賞味期限が5年の缶詰は5年→60ヶ月なので、上式に当てはめると3ヶ月となり、期限が切れてから3ヶ月間を目安に食べきることが望まれます。
ただし本稿でご紹介しました動画における71年前の赤飯の缶詰の状態や、その他数十年前の缶詰を食べた等の記事にたびたび出会うと、消費者庁の出した上記計算式の最後の念のための安全係数、1/2を削除しても安全性には全く問題ないかと思われます。
食品の特性に応じ、設定された期限に対して1未満の係数(安全係数)をかけて、客観的な項目(指標)において得られた期限よりも短い期間を設定することが基本とされている。
缶詰には野菜、果物、水産物、畜産物等様々な種類がありますが、缶詰の賞味期限や期限切れ後の目安期間を知りたい時は各製造メーカーのHPやお客様相談室での問い合わせが可能です。
おわりに
期限切れ後の缶詰の日持ちについては古くから関心の的となっているようです。
食べられるかどうかは、「五感で判断する」という見解がありますが、いささか無謀と言えましょう。食中毒を引き起こす微生物は、腐敗を起こす細菌とは違うからです。
保存の状態も安全性に重大に関わっているため「缶詰だから大丈夫」という安易な判断は控えるべきでしょう。