十五夜って何、満月の夜のことをいうの? このような質問を唐突にお子さんにきかれるといささか戸惑うのではないでしょうか。
確かに、十五夜と満月のことや、旧暦と新暦の関わりなど十五夜については次々と疑問が起こります。
特に面倒なのは「旧暦」のことです。十五夜もそうですが、いまだに旧暦の日にちで行われる風習や行事はたくさんあります。そのため日にちを改めて特定しなければなりません。
いったい十五夜と旧暦、新暦はどんな関わりがあるのでしょうか。
今日は十五夜と満月のこと、さらに旧暦についてできる限り簡単にまとめてみました。
はじめに十五夜についてお話します。
十五夜とは
十五夜は旧暦の8月15日の月見の習わしが行われる夜のことをいいます。一年のうちで一番空気の澄み切った夜になり、この日の満月は特に「中秋の名月」と言われます。
この日は縁側や窓辺など、月を観賞できる場所にすすきや秋の七草でしつらえた月見台を用意し、米でこしらえた団子や芋類、葡萄などの果物類を供えます。
すすきには、神が依り憑くという依代(よりしろ)の意味があります。そのため十五夜のあとにすすきは捨てずに軒先などに吊るしておくと厄除けになると言われています。
十五夜の意味は皆で集まり、神をお招きし、収穫を感謝し、五穀豊穣を祈ることにあるようです。
そして秋の夜長、虫の音を聴き満月を眺めながらごちそうを食べます。大人達は星空の満月を肴に月見酒を楽しみます。
こうした十五夜の習わしは日本古来のものではなく、唐代の中国から平安時代に伝来しました。それが全国に広がり、各地方で様々にアレンジされて今日に至っています。
地方によっては近所の子ども達が連れ立ってよそのお宅を回り歩き、団子や芋を貰いに行くところがあったり、或いは土着の独特な風俗や信仰が十五夜の習わしに結びついた地方もあります。
十五夜は満月なの?
十五夜は必ず満月になるのでしょうか。
残念ながらすべての十五夜が満月になるとは限りません。天体の動きとしての満月と暦の計算上の十五夜は必ずしも合致しないからです。
月の、新月から次の新月に戻るまでの天体運行上の一周期は29.530589日とされています。暦上の一月は30日なので、いわゆる一ヶ月は少し短く終わってしまいます。この分が1~2日の誤差となり、最終的に調整されます。
但し厳密ではなくとも、平均するとほぼ満月と考えてよいかと思います。
ちなみに2019年の十五夜は、新暦でいいますと9月13日ですが、完全な満月は1日遅れの9月14日になります。そして次に完全な満月になる十五夜は、2021年になります。
次に旧暦と新暦のことについて解説します。
旧暦とは
日本には、飛鳥時代に中国から伝来した太陰太陽暦を土台として、江戸時代になって何度か独自に手を加えられ、明治5年(1872年)まで続いた太陰太陽暦がありました。
これが現在旧暦と呼ばれているものです。
その特徴は月の満ち欠けを基準にするので、月の動きに影響を受ける潮の流れや気象の動向、或いは四季の植物の移り変わりがよく分かる点にあります。
旧暦では月の一周期を基準にするので一年は354日で回っていました。
しかし江戸時代末期から黒船来訪に始まる諸外国との交流が始まると問題が起こります。彼らは古代エジプト発祥の太陽暦(グレゴリオ暦)を採用していたのです。
太陽暦は太陽の動きを基準にしているために一年は365日で回ります。そのため旧暦とは一年で11日もズレが生じます。これが数年となるとかなりな日数のズレが発生します。
具体的には諸外国との条約や協定の締結、或いは外交交渉の期限や日取りの確認という点で不正確さや様々な困難が発生します。
この状況で、福沢諭吉など当時の代表的な有識者は改暦を具申しました。そして明治政府も植民地化を怖れ、世界の趨勢に乗り遅れまいと暦も世界基準であるグレゴリオ暦に改暦を決定しました。
明治6年(1873年)1月1日から太陽暦(グレゴリオ暦)へと改暦が施行され、ここから現在「新暦」と言われている基準が始まりました。
この時点から旧暦と新暦のギャップが始まることになります。
おわりに
十五夜の由来は中国の「中秋節」にありました。
中国の中秋節は「春節」に次ぐ規模の全国的な風習で、家族が集まってお互いの安否を確認するという意味合いが強いようです。
この中秋節では「団子」ではなく日本でもおなじみの「月餅」が定番です。
但し日本の繊細な味わいの月餅とは多少中身が違います。餡の中にはアヒルの卵の黄身や蓮の実など様々な縁起物の食材を練り込んで、ボリュームたっぷりの月餅に仕上げます。
こうした経緯が「月餅」という名称の由来になっているようです。またこの時期月餅は贈答品としても大いに活躍します。
近年では月餅の包の中に賄賂のお金が入っていたりするそうです。
最近では取締も厳しくなったようですが、いかにも中国らしい広大な逸話です。