「寛解」という言葉の意味について!

寛解(かんかい)という言葉があります。どのような意味なのでしょうか。

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以前、「完全寛解」という言葉が時のトレンド・キーワードになりました。

これはとある人気アナウンサーが悪性リンパ腫との闘病の末に主治医から、

「完全寛解です!」との診断を告げられ、

そのことを感激と共に自身の公式ブログで報告したことから拡散したようです。

この言葉は医療業界でそれ以前から普通に使われてきましたが、あまりなじみがありません。今日はこの「寛解」という言葉の意味について分かりやすく調べてみました。

寛解の意味は

寛解 (Remission) とは病気の症状が軽減、或いは消失した状態が続き、ほぼ治癒に近い状態に落ち着き、臨床的に治療のコントロールが可能となった場合、このような状態を寛解と呼び、その期間を寛解期といいます。

あらゆる種類の病気に対して用いられてきた用語ですが、完治を意味する治癒(ちゆ)とは異なります。病(やまい)によっては再発や再燃の可能性があるからです。

病の治療は寛解を達成することが第一歩であり、さらに「完全寛解」へと駄目を押し寛解期を継続することが治癒につながります。

この寛解という言葉が明確に定義づけられたのは近年に入ってからでした。

寛解の明確な定義付け

1980年代以前には、医師等の医療従事者の間には寛解という言葉について客観的に明確な定義がなされておらず、そのため各々が個々の患者のそれぞれ異なる病態を指して寛解と判断していました。

しかし1990年代に入って、新薬開発における治験の際の効果判定や、臨床現場では治療ガイドラインの作成の必要性などから、寛解およびそれにまつわる関連用語に明確な定義付けをし共通したコンセンサスをつくろうとする動きが活発になりました。

以下にいくつかの定義付け例を挙げます。

バセドウ病の寛解期

バセドウ病については甲状腺ホルモンの制御が可能となり、甲状腺機能が正常に戻った状態を寛解と定義する。

うつ病・統合失調症の寛解期

うつ病では「ハミルトンうつ病評価尺度」の得点と症状の継続期間により定義される。

白血病の寛解期

骨髄中の白血病細胞が全体の5%以下の状態になれば寛解とされる。

 
このようにして現代では寛解の定義について、医療従事者間でかなり明確なコンセンサスが形成されるようになりました。

次項では寛解の意味を更に理解しやすくするために寛解にまつわる関連用語を挙げて解説していきます。

寛解の関連用語

寛解という言葉にはいくつかの似通った関連用語があり、これがこの言葉を分かりにくくさせています。以下に例を挙げます。
 

  • 治癒(ちゆ)(Healing)
    治癒は完治と同義であり、全快を意味します。病を完全に克服することを意味します。
    しかし寛解は治癒とは一線を画します。病によっては長期療養を要し、経過観察が必要な場合もあり、寛解期を過ぎてから病変の再発、再燃が起こる可能性が皆無ではないからです。
  • 完治(かんち)(Complete recovery)

    治癒のこと。病からの完全な脱却であり、再発の恐れのない状態。

  • 回復(かいふく)(Recovery)
    治療の有無にかかわらず、良くない状態から次第に元の状態に戻っていくことを表す概念ですが、全快には至っていない状態。
  • 快復(かいふく)
    怪我や病が完全に治った状態。治癒と同義、全快を意味します。
    「回復」とは漢字が違うだけでこれだけ意味合いが違ってくるので要注意であり、念のため付け加えています。
  • 再発(さいはつ) (Recurrence)
    症状が消失し、比較的長期の寛解期を経過した後に再度症状が現れること。
    特に経過観察を要し長期治療となるうつ病や白血病などの病変は症状がほぼ改善されても治癒ではなく寛解と呼ぶことが多いようです。
  • 再燃(さいねん)((Relapse)
    広義では再発と再燃はほぼ同義ですが、再燃の場合厳密には寛解期が長く続かないうちに症状が再発することと定義されます。
    再発に至るまでの寛解期の長短が両者の区別となります。
  • 憎悪(ぞうあく)(Exacerbation)
    本来の悪い状態が更に悪くなる場合この言葉を用います。
    一度でも症状の改善が見られない点で再発や再燃とは異なります。

 
以上、寛解の関連概念について解説して参りました。これらとの比較において寛解という言葉の理解が深まりましたら幸いです。

おわりに

今日は「寛解」という言葉について調べてみました。

結局この言葉は医療用語に属するもので医師が患者の病状を判断する際の言葉のようでした。

そして厳密には決して「治癒」或いは「完治」と同義ではないことに注意を払わなければなりません。

しかしながら藁にもすがりたい状況の中で闘病している人にとって、医師から「完全寛解」を宣言されたならば、その時の胸中はどのようなものでありましょうか。

「寛解」という言葉は安易に使えない重さを持った言葉のように感じます。