寒さ厳しい時節柄、風邪が流行っています。手洗いやマスク、うがいを励行する文言が周囲に満ちています。
風邪と言えばウイルス、今日は普段よく聞く言葉「ウイルス」と、似たようなイメージの言葉に「細菌」がありますが、この2つの違いと特徴についてのお話です。
この2つはどちらもヒトに感染して悪さを働く共通点がありますが、大きさや構造、増殖方法などにそれぞれ違いと特徴があります。簡単に分かりやすく解説します。
ウイルスと細菌は全く別物
細菌はバクテリアとも呼ばれますが、ウイルスと細菌は全く別物です。
以下にそれぞれの大きさや構造、増殖方法の違いと特徴について解説し、更にそれぞれの代表的な名称と感染した際の治療手段についても触れていきます。
大きさの違い
細菌の大きさは大きいものでも100分の1ミリ程度ですが、ウイルスは大きいものではさらにその100分の1ミリのサイズとなります。ウイルスは細菌よりも遥かに小さいと言えます。
細菌は普通の顕微鏡(光学顕微鏡)で観察が可能ですが、ウイルスとなると電子線を使用する電子顕微鏡でなければ観察できません。
ウイルスと細菌の大きさを比較すると、目の前に高さ3メートルの棒が立っているとします。これをウイルスの大きさにしますと、細菌の大きさは東京タワーの高さ位になります。
また細菌の大きさはヒトの細胞の大きさに比べると10分の1程度です。
構造と増殖方法の違い
細菌は細胞核を持ち栄養分さえ見つかれば自己増殖が可能で動き回ることも出来ます。
ウイルスは細菌と違って構造的に自分で増殖するような仕組みを持ち合わせていません。
遺伝子情報を持つ核酸とそれを包みこむ殻から出来ている粒子です。単純な構造ですがしっかりと自分の身体の設計図 (DNAもしくはRNA) は持ち合わせています。
そして増殖のためにヒトの細胞内に侵入し寄生します。侵入された細胞はウイルスによって遺伝子を書き換えられて細胞内にウイルスの複製をたくさん作り出します。
やがて時期が熟すると細胞膜を破壊して外部に拡散します。悪いことにウイルスに寄生された細胞は異物や有害物質とはみなされず、白血球などの防御反応を受けません。
それぞれの代表的名称
次にウイルスと細菌でそれぞれよく聞く代表的な名称を挙げます。
ウイルスの部
誰でもご存知の代表選手、インフルエンザウイルスをはじめ、ノロウイルス、アデノウイルス、麻疹ウイルス、風疹ウイルス、HIV、肝炎ウイルス、韓国で流行ったマーズ・コロナウイルス、エボラ出血熱のエボラウイルス、りんご病のパルボウイルスなどがあります。
細菌の部
細菌の方では、大腸菌、サルモネラ菌、コレラ菌、破傷風菌、結核菌などが有名どころで大部分の方がご存知と思います。
これらのウイルスや細菌に対しては有効なワクチンや治療手段があるものとないものがあります。
治療手段について
細菌に対する治療法としてペニシリンのような抗生物質の投与がありますが、ウイルスには効きません。抗生物質は細菌が耐性を備えると効かなくなり、副作用もあります。
風邪の9割方はライノウイルスやインフルエンザウイルスなど、ウイルスが原因とされていますが、中にはインフルエンザ菌という細菌により急性副鼻腔炎や肺炎などの炎症をおこす場合もあります。この時は予防を含めて抗生物質が処方される場合があります。
ウイルスに有効な対抗策としてはワクチンが挙げられます。
しかしワクチン接種は自己の免疫力を高めることで感染リスクを最小限に抑えようとする、あくまでも予防策であって、ウイルス自体を攻撃して死滅させるという治療手段ではありません。
ウイルスは細菌と異なり、正常な細胞の中に潜んで増殖していくというウイルスの特徴的な増殖方法のためにそれを見つけて破壊するという治療手段としての抗ウイルス薬の開発は困難を極めているのが現状です。
しかし良い知らせとして、昨年のエボラ出血熱ではようやく治療手段としての特効薬が開発されつつあるようです。
おわりに
今日はウイルスと細菌のお話をしました。
医師によると、風邪に罹っても完治するのはその人の自然治癒力によるものであり、医師の処方薬や市販薬を服用したから治ったということではないそうです。
それらは個々の症状を軽減させるだけの対症療法にすぎないということです。ヒトはこのようにもともと自然治癒力を持っているわけです。
確かに、胃や腸などのヒトの消化器系にはビフィズス菌や乳酸菌などの善玉菌と呼ばれる細菌や酵素が大腸菌や黄色ブドウ球菌などの悪玉菌と常時闘っており、さまざまな毒性を無毒化し排除しています。
しかし、この世界には無数のウイルスや細菌が存在しています。ヒトの自然治癒力を以ってしても敵わない強力なウイルスや細菌が存在することも確かです。
中には次第に進化していくタイプもあります。それらをことごとく瞬殺できるような抗ウイルス薬に関する研究分野の一層の進展が今後の課題と考えます。