政府は16日、今回閣議決定された2020年度補正予算案の住民税非課税世帯への1世帯30万円の現金給付を取りやめ、各世帯一律10万円給付に変更する方針を固めました。
※出典:首相官邸ホームページ
この1世帯30万円の現金給付案については対象者があまりにも限定的であり、本来の目的に沿わないとして、閣議決定後も政権内外で強い批判がありました。
政府のこの変更は公明党および政権内部の要望を受け入れた形になったものです。
これにより閣議決定後の予算案の組み替え作業が発生し極めて異例の展開となりました。
本稿ではこの変更について分かりやすく解説していきます。
当初の30万円救済策への期待
当初予算案の段階では、住民税非課税世帯という限定があったとしても、1世帯30万円の現金給付という救済策はそれなりに期待されていました。
しかし実際に予算案が可決され、対象者についての要件が明らかになるにつれて、国民の期待は大きな失望に変わりました。
当初の1世帯30万円現金給付とはどのようなものなのでしょうか。
はじめに、可決された予算案の1世帯30万円現金給付の受給資格に関する要件を挙げます。
受給資格についての厳しい要件
1世帯30万円という現金給付の受給資格について、今回のコロナ禍により住民税非課税世帯となった世帯はすべて受給対象となるというような単純な話ではありません。
本年2月~6月における任意の月において世帯主の月間収入に関して、以下の2つの要件が当てはまる世帯が30万円の現金給付の対象者となるそうです。
■要件その1
世帯の月間収入が新型コロナウイルス感染症発生前に比べて減少し、かつ年間ベースに引き直すと個人住民税均等割非課税水準となる低所得世帯
■要件その2
新型コロナウイルス感染症発生前に比べて大幅に減少(半減以上)し、かつ年間ベースに引き直すと個人住民税均等割非課税水準の2倍以下となる世帯
非常に難解で曖昧な文章です。結局どういう世帯に受給資格があるのかよく分かりません。
この他に住民税非課税世帯であっても失業給付を受けていたり、年金受給者、その他生活保護世帯などは除外されます。
この救済策の本質についての簡潔な解説は別項に譲りますが、
要するに、極めて限定された範囲の住民税非課税世帯が対象であり、大部分の救済を本当に必要としている中小の零細事業者やフリーランスは対象に含まれない可能性が大きいということです。
これでは国民の不平等感と不安を増幅させ、そもそも救済策の意味がありません。
緊急経済対策の目的とは
政府は令和2年4月7日、「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策」を閣議決定しました。
「国民の命と生活を守り抜き、経済再生へ」というテーマのもとに取り組む施策としては、
- 感染防止対策と医療提供体制の整備及び治療薬の開発
- 雇用の維持と事業の継続
- 経済活動の回復
- 強靱な経済構造の構築
といったものを柱としています。
今回の政府の救済策としての現金給付は「雇用の維持と事業の継続」の項目に因るもので、その内容は以下の様です。
- 雇用の維持
- 資金繰り対策
- 事業継続に困っている中小・小規模事業者等への支援
- 税制措置
国民一律10万円の現金給付は、経済活動の急激な縮小により深刻な影響を受ける中小・零細事業者やフリーランス、或いは母子家庭の世帯にとって、一時的にせよ明日の生活への手掛かりをもたらす重要な意味があります。
現金給付はいつから始まるの
政府は本来は5月にも財政支出を行うはずでした。
予算案の組み替え作業が発生したことから実際の給付までには遅れが生じます。本来20日に国会提出の予定でしたが、国会提出は1週間程度遅れ、そのままズレ込むことになるようです。
国民への一律10万円給付には12兆円超の財源が必要とされています。
30万円給付の財源を充当し、加えて国債発行や予備費などを流用して財源の根本的な問題を速やかに処理し、与野党の密接な協力のもとに予算の組み替え作業を最優先させる必要があります。
開始時期は政府の段取り次第ですが5月中の実施は難しく、最悪は6月にずれ込む可能性もあるようです。
おわりに
図らずも政権の混乱と迷走ぶりが露見した今回の救済策変更事案ですが、異例とも言える予算案の組み替えは、連立を組む公明党と与党の協同の圧力によるものでした。
466億円もの資金を費やして各世帯に「マスク2枚配布」を発案し、執行しようとする政権ですが、つまらぬ面子にこだわらない今回の法案変更は評価すべきと考えます。
同時にこのようなご意見番が政権内に存在したことは国民にとっては幸運であったと言えましょう。
これにより政権の支持率が致命的に下がることは避けられるのでしょうか。
いずれにしてもこの国民一律10万円現金支給という救済策は最優先課題であり時機を失してはならないことは言うまでもありません。