デルタ株が各国で猛威をふるっている現在、更にミュー株とかイート株などの新しい変異株ウイルスが注目されています。
本稿ではミュー株ウイルスの特徴について簡単にお話し、こうした次々と現れる変異株ウイルスに対して、WHOはどのような位置づけをしているのか簡単にまとめてみました。
はじめにウイルスの変異のメカニズムからお話していきます。
ウイルスはなぜ変異するの?
変異株ウイルスはどうして発生するのでしょうか。
ウイルスは人の細胞内に侵入すると自らを複製して増殖していくわけですが、この複製の過程で遺伝情報のコピーミスが発生します。これにより異なる性質を持つ子孫が発生することを変異と呼んでいます。
こうした複製過程でのコピーミスはRNAウイルスの場合は特に顕著であり、一定の確率で普通に発生すると言われています。
但しこの変異は、「株」の単位での微細な変異であり、「種」としての同一性は保持しています。それゆえに「変異株」であっても「変異種」ということではありません。
ミュー株ウイルスの特徴は?
ミュー株ウイルスは日本においては本年6月以降、2名の感染者が確認され、それから注目されだした変異株ウイルスですが、最初はコロンビアで2021年1月に確認されています。
その特徴について、東大医科学研究所の研究結果では、ワクチン接種の効果を7分の1に減少させるという報告がなされています。
ミュー株はウイルスに対する中和抗体に耐性を持った変異株ウイルスと言えるかと思います。しかし、このことからミュー株に対してワクチン接種は無効であることにはならないようです。
コロンビアにおいて、ミュー株が感染者の半数を占めていた時期に、重症化した患者の約8割がワクチン未接種者であったことが発表されています。この数字はミュー株に対して、ワクチン接種により重症化を免れることを意味します。
次に感染力が気になりますが、1月に最初にコロンビアで発生して以来、6月に日本で感染者が確認されるまで既に半年以上の時間が経過しており、感染者が2名にとどまっていることから感染力についてはそれほど強力ではないように考えられます。
その他ミュー株に関しては日本においても2名の感染者が最近確認されたということ以外、まだまだ情報が不足しているのが現状です。
ところでこうした新たな変異株ウイルスについてWHOはどのように捉えているのでしょうか。それぞれの変異株ウイルスの位置づけについて解説します。
WHOによる変異株ウイルスの位置づけ
WHOは武漢の新型コロナウイルスの発生以来、現在に至るまで、「懸念される変異株」(Variants of Concern)として4株を指定し、さらに「注目すべき変異株」(Variants of Interest)として今回のミュー株を加えて5株のウイルスを指定しています。
その内容は以下のようです。
●懸念される変異株(VOC)
アルファ株 2020年 9月:英国株
ベータ株 2020年 5月:南アフリカ株
ガンマ株 2020年11月:ブラジル株
デルタ株 2020年10月:インド株
「懸念される変異株」とは、現在最も注意を払わなければならない変異株であり、このうちデルタ株はほぼ世界各国の変異株ウイルスの7割以上を占めており、その感染力や重症化率においても、最悪の変異株ウイルスといえるでしょう。
●注目すべき変異株(VOI)
イータ株 2020年12月~ 複数国
イオタ株 2020年11月~ 米国
カッパ株 2020年10月~ インド
ラムダ株 2020年12月~ ペルー
ミュー株 2021年 1月~ コロンビア
「注目すべき変異株」は、感染力などに関して「懸念される変異株」ほどの恐ろしさはないとしても、ミュー株のように抗体を無効にするような特徴をもつ変異株もあり、今後の挙動に注目しなければならない部類に指定されています。
今後の変異株への対応
感染の拡大に伴い、新たな変異株ウイルスが多数発生することは間違いありません。
どのような変異株が誕生しようとも、即対応できるような、国際社会が一致団結したグローバルなワクチンの開発体制が切望されます。
現在、「GISAID」というウェブサイトでは新型コロナウイルスの遺伝子配列がデータベースに登録、公開されていて新たな変異ウイルスが次々と報告されています。
更に「GISAID」ではそうしたデータを分析するために世界中の開発者とデータ共有し積極的な活動をしています。人類にとって貴重な活動です。
新たな変異株ウイルスへの対応として、世界的なネットワークによるウイルスの拡散状況や監視体制の強化、ゲノム解析結果などの情報の共有などは極めて重要ですが、大前提として国際社会が一致団結して協同することが必要と考えます。