今年も「芒種」に入りました。とは、一体どういう意味でしょうか。
この普段あまり聞きなれない言葉は「ぼうしゅ」と読み、暦の中に区分けされた季節のことを表しているそうです。
古来芒種は稲や麦、粟など穀物の種を蒔いたり、田植えなどを始める時期として重要な目安としての意味を持っていました。
そのことは「芒種」という漢字にも暗示されており、古くから「芒(のぎ/のげ)」のある穀類はすべてその「種」を蒔くべき時節であるということが伝えられてきました。
芒とは穀物の種子の先端から突き出している細長い針状の部分を指します。
ここから芒種という季節の名称が誕生したようです。
今日は芒種の意味とこの言葉にまつわる縁起について、更にこの時期の旬の食べ物について調べてみました。
芒種とは
芒種とは「二十四節気(にじゅうしせっき)」という暦の中の季節の名称のことを言います。元々は古代中国で田植え等農作業の目安としてつくられた暦です。
二十四節気とは一年を太陽の黄道上の視位置によって24等分し、その分割点に季節の名称を配した暦のことです。
春分や夏至、秋分や冬至にみられるように、特に季節の移ろいや変わり目を表す暦です。今年2020年の芒種は6月5日から始まります。
そして次の節にあたる夏至の6月21日までの期間になります。芒種は通常毎年6月6日あたりから15日間とされていますが、その始まりと期間は変動します。
芒種の意味は?
現代において「二十四節気」の暦の意味は、その季節に入るための準備段階に入ったというような意味合いになります。
芒種に入ることの意味は田植えを開始する季節が始まったということになります。しかし実際の季節感よりは1ヶ月程度早目にやってきます。
この理由については、旧暦と新暦の違いとか、中国と日本との季節感のズレとか様々な見解が見られます。
いずれにしても現代において「二十四節気」の暦の考え方として、この暦が指し示す季節に入ったならば、その季節になすべきことの準備が始まったと捉えると良いかと思います。
つまり、芒種になったら実際に田植えが始まるのではなく、田植えの準備の時期にはいったと考え、立冬に至ると冬に入る前の準備の季節になったと考えるとしっくり理解できるかと思います。
夏至にしても2020年では6月21日になりますが、夏としては早すぎます。夏に至る準備をするべき時期に入ったと解釈すべきです。
芒種という言葉の縁起
「芒種」という言葉は本来は季節の名称ですが、「種を蒔く季節」ということから芽が出て成長し、収穫につながるという一連のイメージのせいか、縁起の良い言葉として定着しており、様々な使われ方をしています。以下に挙げます。
習い事に関する縁起
歌舞伎や能など伝統芸能や習い事の世界では子供に6歳の6月6日から修業を開始させると縁起が良いとされています。
6歳からという意味は毎年6月に「芒種」がやって来るからで、今年2020年であれば6月5日から習い事を始めるのが良いということになります。
時候の挨拶
芒種という言葉は時候の挨拶にも使用されます。
「芒種の候」を時候の挨拶として使用する期間は6月5日から6月11日頃の「入梅」までを目安とするという見方もありますが、「芒種の候」は文字通り芒種の期間内で使用することに問題はないかと考えます。
なおその際の形式はおおむね以下のようです。
芒種の候
姉上様におかれましてはますますご活躍のこととお慶び申し上げます。
(中略)……(用件・主文)
梅雨冷えの厳しき折、どうぞご自愛くださいますよう。
敬具
季語として使われる
「芒種」にかかわらず二十四節気にある季節名称は俳句などの季語として多数使われています。もともとは季節の移り変わりを表す暦であればごく自然な流れと言えましょう。
ここでは「芒種」が季語となっているいくつかの例句を挙げます。
例句: 暁の西より晴るゝ芒種かな
作者: 後藤昭女
例句: 芒種なり水盤に粟蒔くとせむ
作者: 草間時彦
例句: 干し傘のふと飛んでゆく芒種かな
作者: 小泉八重子
次項では芒種の時期の旬の食べ物についてご紹介します。
芒種の旬の食べ物
芒種の季節の旬の食べ物をざっと挙げます。
梅雨という言葉の語源にもなった、梅の実がこの時期熟します。春野菜ではトマト、キャベツ、ズッキーニ、きゅうりなどがあります。
さまざまなレシピが出回っていますが、特に、青梅レシピやズッキーニレシピなどが参考になろうかと思います。
魚類ではイサキ、鯵、イワシ、タコなどが旬の食材になります。天ぷらやフライにすると手軽に旬の味を楽しめます。スーパーでは天ぷらやフライ用に「開き」の状態で販売されています。
鬱陶しい梅雨の時節柄、食欲不振に陥っている時には、炊き立ての温かいご飯の小盛にきゅうりの酢の物や辛し和え、梅干しそのままなどが良いかも知れません。茶漬けで頂くのも一案です。
おわりに
今日は普段聞きなれない「芒種」という言葉についてリサーチしてみました。この言葉は結局季節を表す言葉でした。
ちなみに沖縄では二十四節気の中の小満と芒種を合わせた「小満芒種」という言葉は「スーマンボースー」と発音し、梅雨の季節を意味するそうです。
「芒種」という言葉は、梅雨時の鬱陶しい語感がありますが、縁起の良い言葉でもあることは確かなようです。