コンゴ東部で流行っているエボラ出血熱により死者が200人を超えたそうです。
エボラ出血熱とは以前聞いたことはありましたが、伝染病の一種らしいという程度の認識しかありませんでした。
よく考えてみると一国で200人もの死者が出るような事態は非常事態に違いありません。
もしも日本でこのような事態が起こったら大変な騒ぎになります。
いったいエボラ出血熱とはどんな症状なのでしょうか、治療法は無いのでしょうか。
今日はこのエボラ出血熱の症状や治療法と根絶について考えてみました。
エボラ出血熱とは?
エボラウイルスに感染することで発症する感染症で、50%から90%という高い致死率をもつ急性熱性疾患です。
初めてエボラ出血熱が発生したのは1976年で、アフリカ大陸の中央部、コンゴ民主共和国(旧ザイール)及びその周辺国で発症しました。その後周辺国も含めて何度か流行と終息を繰り返し、2012年までに1600人以上の死亡者を出しています。
これらの地域ではコウモリを食べる習慣があり、エボラウイルスの保有宿主はオオコウモリと言われています。
2013年の12月、今度は西アフリカのギニアからはじまったエボラ出血熱はこれまで以上の破壊力のあるエボラウイルスのために、11000人以上もの死亡者を出して2016年1月にようやく終息しました。
しかし2018年10月の現時点においても他地区の保健区域から死亡報告が出ています。決して根絶しているわけではありません。
エボラウイルスは麻疹などのように空気感染で直ちに伝染するというものではなく、感染者の嘔吐物や血液などの体液に不用意に触れることにより、傷口や粘膜から感染すると言われています。
そのため感染者の世話をする家族や直接患者と接触する現地の医療従事者の感染例も多く報告されています。
エボラウイルスは攻撃力は強くても生命力はそれほど強いわけではなく、アルコールなどの消毒薬できちんとした衛生知識を持って完璧な消毒と隔離を行うことで拡散しないと言われています。
エボラ出血熱の症状は?
エボラ出血熱の症状は眼球や歯茎、皮膚、腸管などからの激しい出血を伴うことで知られています。出血は全ての患者に見られるわけではなく、激しい出血が起こるのは末期的症状です。
はじめは、10日前後の潜伏期間の後、頭痛、発熱、喉の痛みなどインフルエンザ様の症状を引き起こし、更に進行すると体中の筋肉の激痛、腹痛、嘔吐、黄疸、高熱、吐血、下血などの症状が現れます。
このウイルスには血液の凝固を妨げ、腎臓や肝臓、腸壁など、臓器の細胞組織を壊死させる特徴があります。壊死した組織は大量の血液に溶けだし一緒に体外に噴出します。
この時、輸血のための針を刺しても、その針の傷口から血液が吹き出し場所を変えようとも、輸血は困難な状態になります。血液が固まらず手の施しようがなくなります。
末期的症状は、大量の内出血や外出血を伴い意識混濁を引き起こし昏睡状態に陥ります。通常、多臓器不全と出血性ショック症状により死に至ります。
エボラ出血熱の治療法は?
エボラ出血熱の特徴は、患者数がHIVやガンに比較すると遥かに少なく、発症地域も衛生観念や設備も整っていない恵まれない地域に限定されます。
このような特徴から巨大な資金を投入して新薬を開発するには採算性が見込めず、大手製薬会社はワクチンなどの新薬開発には消極的か若しくは傍観の姿勢です。
わずかに米国防総省が2012年からウイルス・テロ対策を念頭に国家安全保障の見地から複数のバイオ企業に資金援助を始めてワクチンの開発を支援しています。
その結果、エボラ出血熱に有効なワクチンは出来上がりつつありますが、まだ完全なものではありません。このような状況の下にエボラ出血熱の治療は、基本的には患者の症状に応じた対症療法となります。
しかしながら先進の医療技術による対症療法により、現在は致死率も50%以下に抑えられており、ウイルスの拡散も最小限になっています。
エボラ出血熱を根絶するには?
結局エボラ出血熱とは、コウモリを食べたり、猿などの野生動物の生肉に接したりするような生活習慣に加えて、迷信信仰や公衆衛生知識の極端な欠如といった地域的特性が引き起こす風土病のようなものなのかも知れません。
エボラ出血熱を根絶させるには、もちろん感染者を早期発見し隔離することは重要ですが、地域の人々に対する公衆衛生観念の植え付けと感染症についての基本的な教育と啓蒙、そして安全な方式による犠牲者の尊厳ある埋葬の指導などが不可欠と考えます。
同時に、こうした地域の人々への教育と啓蒙は一国でできるものではなく、人道的な見地からも世界各国の協力体制の下に徹底されることが求められます。
※2019年8月現在、臨床試験の結果、エボラ出血熱に極めて有効な医薬品が特定されました。