「線状降水帯」という言葉がしきりに取り沙汰されています。
気象庁は新潟県下越と山形県置賜で線状降水帯が確認され、非常に激しい雨が同じ場所に降り続いているとして、3日午後1時すぎ「顕著な大雨に関する情報」を発表しました。
その後も雨は降り続き、国土交通省の雨量計では午後4時までの1時間で、新潟県村上市で81ミリの猛烈な雨、山形県小国町で64ミリの激しい雨を観測したとのことです。
さてここで気になる言葉「線状降水帯」とはどのようなことなのでしょうか。
本稿ではこの聞きなれない言葉、「線状降水帯」とは一体何なのか、これが大雨の誘因であるならば、どうしてできるのか動画を交えて、わかりやすく解説していきます。
線状降水帯とは何?
線状降水帯とは、積乱雲が一定方向に向かって次々と列をなすように活発に発生と消滅を繰り返している領域のことをいいます。
積乱雲とはいわゆる雨雲のことで、通常激しい雨を降らせます。線状降水帯はそのまま通過する場合もありますが、停滞してその場に居座ることもあります。
その範囲は幅が20~50km程度、長さは40km~50kmあたりから大きな場合には300kmもあり、この積乱雲群に停滞されるとその地域は豪雨により甚大な被害にさらされることになります。
よく比較される「ゲリラ豪雨」は限定的な範囲で大雨を降らせるという意味で、線状降水帯の小型版ということが言えるかと思います。降雨のメカニズムは全く同じです。
次にこうした線状降水帯はどうしてできるのでしょうか。
線状降水帯はどうしてできるの
これには分かりやすい動画(1分06秒)がありましたので始めにご紹介します。
要するに、線状降水帯はいくつかの気象条件が重なることで発生します。その条件は以下のようです。
●線状降水帯が発生しやすい気象条件とは
- 暖かく湿った空気が入り込む
- その空気が連なっている山々や冷たい空気とぶつかるなどして上昇する
- 上昇した暖かく湿った空気は断熱膨張により冷えることから積乱雲を発生させる
- 発生した積乱雲を一定方向に流す強い風があること
6月から7月頃に日本の周辺には梅雨前線が発生します。前線は暖かい空気と冷たい空気の境目が地表に交わるところを言います。暖かい空気は上昇して積乱雲を作ります。この前線で発生した積乱雲が活発に発達し列をなすように伸びた領域が線状降水帯と呼ばれます。
こうしてできた線状降水帯では通常非常に強い雨が長時間降り続け、土砂災害などの甚大な被害を引き起こします。
線状降水帯はいつから言われだしたの?
「線状降水帯」は最近耳にするようになった真新しい言葉のようですが、日本では、線状降水帯については1990年代あたりから集中豪雨等発生時にしばしば確認され、指摘されていました。
気象庁気象研究所のレーダー観測の分析によると、1995年から2006年の間に発生した台風を除く豪雨災害261件の内、およそ6割(168件)が線状降水帯に起因しているとの結果が出ています。
そして線状降水帯に起因する災害は、九州、中国、四国など西日本にとりわけ多いようです。
おわりに
今日は聞きなれない言葉、「線状降水帯」について調べてみました。
人類は自然の災害には太刀打ちできないとしても、最近では気象条件などを精密に判断できるレーダー観測の技術も飛躍的に進歩し、線状降水帯の発生も事前に予測できるようになっています。
線状降水帯予報が発令された際には、低い土地の浸水、河川の増水や氾濫等に対しても事前に対策を取ることで損害を最小限に食い止めることができます。
また長期にわたって雨が降り続いている地域では土砂災害や山崩れなどにも注意を払わなければなりません。更に地形によっては落雷や竜巻も発生します。これらも予め予報が出れば事前に対策を練ることが可能です。
何が起こっても良いように、事前に十分な対策をしておくことが自然の災害に対する備えとして望まれます。