「紅白」という縁起の良い色があります。
「紅白」は、日本において結婚式やお祝い事などおめでたい事に伝統的に使われる赤と白の二つの色の組み合わせを指します。
そしてこの色には縁起の良いイメージの他に、もう一つの対立する二つの集団を表すイメージもあります。
結婚式は勿論、祝賀会、落成式、入学式など、お祝い事や催事には必ずと言っていいほど「紅白」が出てきます。
本稿では「紅白」という色の持つイメージは元々は米の色に由来するのではないかと思い調べてみました。
まず、「赤」が「紅」なのはどういうことでしょうか。
「赤白」でなく「紅白」なのは?
元来漢字は中国から来たものですが、この紅白という漢字は典型的な中国由来の言葉のように思います。
中国語では「赤い色」は「紅色」になります。もともと赤い色という単語は使いません。
中国の人達も紅色が大好きでお祭りごとは紅色の単語が頻出します。
結婚式は「紅事」、ご祝儀は「紅包」、ウェディングドレスは真っ赤なチャイナドレスを着るという具合です。
「紅白」という漢字は源平時代以前に中国から渡来し、日本でそのまま「紅白」で定着したために「赤」が「紅」のままなのだと思われます。
「紅白」という色が持つ二つのイメージと由来
「紅白」には二つのイメージがあります。
まず一つ目の縁起の良いイメージはどのような由来からでしょうか。
日本では現代でもおめでたい時には赤飯を作る風習がありますが、これは古代からの名残のようです。その理由は古代人は赤い色には邪気を祓う力があると信じていたことによります。
稲作が始まってから古代米の源流は赤や紫色をした赤米と白米の2種があったそうです。そのうち縄文時代末期に日本に伝来したのは赤米に近い品種でした。
当時は米自体が大変な貴重品で、それを神々に供養していたようでした。「赤飯供養」という風習です。
白米は奈良時代には日本にも伝来していたようで、その味は赤米よりも遥かに美味しいものであったようです。
ただ、あまりにも貴重品であり、また当時は精米技術も未熟であったためごく一部の上級貴族のみがたまに食べられたようでした。
その後、米は江戸時代の辺りから品種改良がなされ、精米技術も進歩し、赤米より美味しく収穫量も大きい白米に変わっていったのですが、赤飯を炊き神々に供養する風習は各地に残りました。
江戸時代の文献『萩原随筆』にも凶事に赤飯を炊く風習があったことを伝えています。
凶事に赤飯を炊く理由は、古代の赤飯供養と照らし合わせると、赤色が邪気を祓う効果がある事を期待し、何やら人智を超えたもの、恐ろしいものには畏敬の念を示し赤飯を供養していたと思われます。
それが凶事に赤飯を食べたところたまたま良い現象が起こり、その結果吉事にも赤飯を食べるようになったのではないでしょうか。どうやら「紅白」の由来は米の色が関係しているように思うのです。
そこからどんどんイメージが拡大して今日に至り、「紅」は縁起がよい米、「白」は抜群に美味しい米ということから「紅白」が結びつき、「縁起の良い色」として定着したのではないかと思われます。
次にこの色が持つもう一つのイメージは、対立する二つの集団を表すものです。
この由来は源平時代に遡ることになります。平氏が赤旗を掲げ、一方源氏は白旗を掲げて合戦したことに由来するようです。このイメージはそのまま「紅白歌合戦」という形で現代でも使われています。
まとめ
紅白という色がめでたいお祭り的なことに関わっているのは日本に限ったことではなく、海外では薔薇の国ブルガリアでも毎年春が来る前に赤と白の色でお祭り騒ぎになるそうです。
これは3月1日になると赤と白の毛糸を編んでマルテニッツァという人形を作ったり、腕輪を作ったりして互いに贈ったり贈られたりする風習だそうです。
それを春が来るまで身に着けていると1年間健康に恵まれるということです。「紅白」という色は調べるほどに興味深い話が出てきます。
奥の深い不思議な色だと思います。