ワクチンの効果は時間とともに低下していきます。一方、次々と新たな特徴を持つ新型コロナウイルスの変異株が発生しています。
こうした状況を踏まえ世界各国ではブースター接種ということが計画され、議論されています。
日本においてもブースター接種が決定され、この12月から始まっています。ところがこのブースター接種、いささか懸念される点があります。
本稿ではブースター接種とはどのようなことなのか、更に懸念される問題点についてお話します。
ブースター接種とは
3回目のワクチン接種のことをブースター接種といいます。
この考え方は、現在主流のモデルナ製やファイザー製のワクチンは1回目のワクチン接種を終えて、更に2回目の追加接種を受けることで安定した効果が得られると発表されていることから、この2回目のワクチン接種完了をもってとりあえずのワクチン接種は終了するというものです。
ところが新たな脅威となる変異株、オミクロン株の感染拡大を背景に、日本を含めて、アメリカ、フランス、イギリス、イスラエルなどの富める国を中心に、更に3回目のワクチンの追加接種が必要だとする議論が出てきました。
この3回目のワクチン接種がブースター接種と呼ばれるものです。日本では既にこの計画は決定され、この12月から医療従事者を中心に開始されています。
ブースター接種の効果
ワクチン接種は体内にウイルスに対する抗体をあらかじめ作ることで自然免疫よりも、より効率的に感染防止や感染しても重症化を防ぐ効果があります。
しかし時間の経過と共に抗体値が低下すると言われており、その期間はおよそ半年とされています。そのため2回目接種で終了するよりも、3回目接種により更に抗体値を維持できると考えられます。
イスラエルのエルサレム・ヘブライ大学の研究者によると、ブースター接種の効果について、「長期的にはどうなるかは、現時点では分からない」としながらも、イスラエルにおける60歳以上の住民、110万人以上の健康記録の暫定的な調査では、ブースター接種から少なくとも12日後の感染率は2回目接種者に対し11分の1、重症化率は20分の1近くにまで下がったことが確認されたということです。
但し、これまでのワクチン接種は従来株やデルタ株に対して効果が確認されたワクチンを使用していました。このワクチンの3回目の接種によりオミクロン株にどれだけの効果があるのかは現時点での評価はできないと思われます。
オミクロン株はワクチンの2回目接種を終えた人でも感染することが確認されています。
免疫を回避する新たな変異株が出現した場合、これに対応するワクチンの接種が必要となります。現在アメリカやロシアではオミクロン株に対応するワクチンの開発に着手しています。
ブースター接種の問題点
ブースター接種に関しては以下のような問題点が挙げられます。
世界的な集団免疫の獲得に反する
ワクチンの絶対量が不足している中で、既に2回目接種を終えている富める国が先を争うように、更に3回目の接種を計画する前に、その分を未だにワクチン接種が国民の数パーセントしか終えていないような低所得国に贈るべきではないか。
世界的な集団免疫の獲得こそ最重要課題なはずであるとするWHOを中心とした指摘があります。
これは世界的にこのコロナ禍を終息させないと、更に脅威となる変異株が現れる可能性を懸念したものです。
ヒトの自然免疫システムへのリスク
ヒトは本来ウイルスや細菌に対応できる免疫システムを持っています。
新型コロナウイルスが始まった当初、最初の感染者の大部分はワクチンなどは接種しておらず、それでも自力で回復して退院しています。これはヒトの持つ自然免疫システムが機能したからに他なりません。
ワクチン接種はこうしたヒトの持つ自然免疫のシステムに外部的に介入して効率化する効果があるとしても、3回目、4回目と無闇に介入することからヒトの本来持つ免疫システムに、いわゆる「免疫疲労」といった観点から何らかの悪影響を与えるリスクがあるような気がしてなりません。
ブースター接種のあるべき姿
今回の新型コロナウイルスは数々の変異株の出現と共に、風邪などのインフルエンザやノロウイルスとは違って遙かに強い毒性を持っており、感染力も強いために今回の世界的なワクチン接種騒動に発展しました。
そのためヒトの自然免疫のみに頼ることには無理があるとしても、3回目、4回目のワクチン接種で得られるメリットと、無闇に外部的に介入することからくるヒトの自然免疫機能に与える悪影響、及び血栓や心臓障害などの副反応のリスクとのバランスが大切となります。
ブースター接種は国民全員に対して、一律包括的に接種をするのではなく、特に高齢者や既往症を抱えた抵抗力の弱い人達、或いは2回目接種後でも効果が見られない人達などに限定した接種が妥当と考えます。
おわりに
新型コロナウイルスの感染が爆発し始めた頃のアメリカでは、ファイザーとモデルナのワクチンの緊急使用が承認されました。
ワクチン接種には、まず初めに医療従事者や介護施設関係者、次に消防士や教師、その次に65歳以上の高齢者などと順番がありました。
そうした順番を横目に、恥も外聞もなくアメリカのみならず他の多くの国々において、優先的な接種を希望する富裕層や権力者からの問い合わせが接種機関に殺到したそうです。
なんとも浅ましい姿です。