地震雲って地震の前兆なの……?
「地震雲って地震の前兆なの……?」 唐突に子供に訊かれました。地震と地震雲、この両者にどのような関係があるのでしょうか。
昨今では日本各地の活断層もほぼ正確に把握され、地震予知に関しては飛躍的に進歩していますが、いつ地震が起こるかの問題は現時点でも分かりません。
地震の発生には前兆として地震雲ができると言われています。果たして地震の前兆として地震雲というものが存在するのでしょうか。
地震雲に関する公的な見解
気象庁はこれまで、雲の発生は大気現象に依存しており、地震は地殻現象の現れなので両者は全く別物であり、雲と地震の関連は科学的、気象学的な裏付けがなく、従って地震雲というものは存在しないという見解をとっています。
しかしいまだに地震とその前兆である地震雲ということがやかましく言われています。「地震雲」というキーワードは決して消滅していません。
では地震雲という言葉はどこから出てきたのでしょう。
地震と雲との関連説の始まり
「地震雲」の研究は1880年代に鍵田忠三郎という政治家から始まります。この人は地震と雲との関係に関心を抱く地震雲の研究家でもありました。
1948年の福井地震を2日前に予知して地震雲の存在を確信したと言われています。その後13年間奈良市長を務め、その間いくつかの地震を的中させました。
そして鍵田と一緒に地震雲を研究している熱心な協力者の一人に真鍋大覚という人がおり、この人が地震の前兆につながる雲を「地震雲」と名付けたことに由来します。
ちなみにこの人は、
「放射状の雲は震源を指し、近くでは長時間滞空し遠地では短い。波紋状の雲が同心円上に出る時は垂直方向が震源となる」という、
地震の震源捕捉法を説いています。
このため「地震雲」については1880年以来、地震雲という現象は根拠がないという公的な立場と、根拠はあるとする鍵田や真鍋の根強い支持者が現在に至ってもなお対峙しているのが現状です。
地震雲の特徴
実際に、地震の前に特異な形の雲が多数報告されています。それらは地震雲なのでしょうか。
そもそも公的な見解では前述の通り地震と雲との因果関係を認めない立場なので「地震雲」自体が存在しません。
ここでは一般的にいわゆる「地震雲」と言われている雲の特徴を挙げてみます。
地震雲については雲の形が通常のそれとは異なるとか、形は同じでも発生するメカニズムが違うなど様々な見解があります。
地震前に報告される雲の特徴は以下のようです。
●放射状、波紋状など様々な形がある
●低い高さに発生することが多い
●流されずにその場に留まる
●そのままの形を保つ
●地震の規模に関係なく発生する
以上の特徴を持つ雲が地震雲と言われています。
結局、これらがまさしく地震雲の特徴なのかどうかの解明は後世の研究に委ねられることになります。
おわりに
今日は地震と地震雲との関係についての2つの対立する見解をご紹介しました。
昔から地震の前兆現象として、猫や小鳥など動物の異常行動、鳥類の鳴動、地域的な電波障害の発生、井戸水の異常な増減などが言われますが、これらの地震との関係性は科学的にも説明できるそうで、それなりに地震の前兆として理解されています。
しかし地震と雲との関わりは研究者の間でも意見が大きく分かれています。
地殻現象と大気現象を全く別次元の事象として切り離して考えることは正しいことでしょうか。
本稿としては地殻現象が大気現象に全く影響を及ぼさないということを、現在の未だ発展段階にある科学力で判断できるのかどうか疑問に思います。
将来的にさらに科学が発達し、進歩していく中でこのような問題も「科学的」に解明される時代が来るような気がします。