ここ数年で認知度が増してきた言葉PMSとは、月経前症候群(Premenstrual Syndrome)のことで、健康な女性であれば程度の差こそあれ誰でも経験する一連の症状をいいます。
PMSという症状の特徴は、ひどく気分が滅入り、心身共に辛かったり、イライラして人に当たったり、感情を自制できないところにあります。
時には、それが自身の性格であると思い込み、PMSの症状であることに気付かないでいる場合もあります。
本稿ではPMSの辛い症状の改善策を調べてみました。
PMSの発症と症状
PMSは生理が始まる一週間前後に症状が出始め、生理が終わると終息するパターンが多いようですが、発症時期や期間、症状や重篤度にはかなりの個人差があります。
その症状は人さまざまで、数十種類以上もあリ、主なものは下腹部の痛み、腰痛、乳房のハリや痛み、肌荒れ、肩こり、めまい、吐き気、手足のむくみなど、主に身体に現れる症状と、
躁うつ感、不眠症、情緒不安定、イライラ、怒り、集中力の低下、無気力等、精神面に影響する症状があります。
このうち精神面の症状で、強い怒りや苛立ちなどを自制できなかったり、極度の情緒不安定などで社会生活に支障をきたすほど重い場合を、
特にPMDD、月経前不快気分障害(Premenstrual Dysphoric Disorder)ということもあります。
海外ではPMSに対する認識は社会的に定着しており、その研究も進んでいるので、専門的な治療や相談のできる医療機関が充実していますが、
日本においてはここ数年ようやく認知度が上がってきた女性特有の症状であり、その認知度の低さのゆえに、本人がPMSの症状であるということに気づいていなかったり、
PMSの症状が自分自身の生来の性格に由来するものであるかのように誤った認識をしていたりします。
その上周囲の男性のPMSに対する理解や協力はほとんど期待できません。
PMSの症状の原因は
この症状の原因については不明です。
生理前に増加する黄体ホルモン(プロゲステロン)と、卵胞ホルモン(エストロゲン)とのバランスの崩れが原因であるとか、
排卵を抑制するとPMSの症状が軽減されることから黄体ホルモンが関与しているとか言われていますが本当のところは判明していません。
ただホルモンのアンバランスが関与していることは確かなようです。
辛い症状の改善策は?
このようなPMSの辛い症状にひどく苦しんでいるならば、一人で抱え込まずに迷うことなく専門医の受診をお勧めします。専門医による正確な診断と医薬品の適切な処方により苦痛は劇的に改善されます。
PMSの診療科目は基本的に「婦人科」での受診になります。
ただし躁うつ感や情緒不安定、あるいは強度のイライラ感など精神面での症状が重い場合はPMDDとして「心療内科」又は「精神科」との併診となります。
PMSの治療は、医師の問診から始まり、服用薬の選択、そして服薬という流れになります。
問診では症状と発症時期を確認されるので、受診の際には基礎体温と月経周期の日数の記録なども含めて予め詳細に症状をまとめておくとよいでしょう。
PMDDで「心療内科」や「精神科」との併診になりますと服薬の他にカウンセリングなどの精神療法が加わります。
「婦人科」での受診は抵抗があるかも知れませんが、検尿や血液検査はあるとしてもPMSでの受診であれば必ずしも内診があるわけではありません。
但し、ピルを処方する場合とか、他の病気が疑われる場合は確実に内診があります。
男性医師に抵抗があるようでしたら女医さんのクリニックを選ぶなり事前に調べておくとよいでしょう。
治療薬
治療薬は大別するとほぼ以下のようですが、併用する場合もあります。
- 「経口ホルモン剤」
いわゆるピルのこと。排卵を抑えることでPMSの症状を軽くします。
- 「漢方薬」
種類が多く、効果が出るのは1ヶ月以上を要します。
- 「対症療法剤」
イライラには抗うつ剤や精神安定剤、痛みがひどいときには鎮痛剤。
市販薬と違い専門医による処方であり、優れた効果が期待されます。
基本的に健康保険は効きますが、漢方薬は保険の適用外と思って良いでしょう。
自宅療法は…?
様々な事情から自宅療法を望まれる方も居られることと思います。PMSの症状がそれほど重くなければ、市販薬を試してみるのも選択肢となります。
最近では定評のあるPMS治療薬が市販されており、ネットで手軽に入手できます。
自身のPMSの症状をしっかりと把握し、きちんとした知識を得た上で、副作用のことや口コミ、実績なども勘案して治療薬を選択するとよいでしょう。
但しその際にも一定期間様子を見て効果が見られない場合には何かが間違っているのであり、服用は中止すべきです。
言うまでもなく専門医の受診が一番の安全策であることは間違いありません。特に精神面の不安定度が重篤な場合には注意が必要です。
おわりに
今日は日本であまり馴染みのないPMSという症状についてのお話でした。PMSであることにすら気づかずに、人知れず苦しんでいる人の辛い症状を改善すべくPMSについて調べてみました。
頻回に現れるイライラを始めとする否定的な情動が自制できないほど深刻な場合は迷わずに医師にかかることを強くお勧めします。
我慢することにより周囲との人間関係が損なわれ職場で孤立したり、夫婦間ですと離婚に至ることすらあります。
それはPMSの症状なのであり、決して自らの性格に由来するものではありません。
その苦しみは専門医の適切な医薬品の処方により心身ともに劇的に改善されます。